「オウ!姉ちゃん俺たちと遊ぼうぜ!」
あぁ、まただ。
「いえ、急いでますので…」
「オイオイ、親分の誘いを断るってのかい?悪いこたぁしねぇからよォ…」
今日も今日とて強引なナンパ。
こういう人たちは常にそうだ。集団でいないと何も出来ない。
それでも付いて行かない姿勢を示すと、決まってこうなる。
「このアマァ!いいんだぜェ?付いてこねぇってんならこの場で全員で輪姦(マワ)してやらぁ!」
「おう!」
「いいぜェ!ヤッちまおうぜ!」
でも、そんなことには絶対にならない。
何故って?私には自信があるし、今でも感じ取れる。

「キミたちさ、ここが薄桜学園(はくおうがくえん)前、薄桜坂(はくおうざか)と知っての狼藉かな?だとしたら…殺すよ?」
にこやかに近づいてくるけど強烈な殺気を放っている青年と。
「止めはせん。だがここで至らぬことをすれば、手足の2、3本は失くすものと覚悟を決めろ」
別に私に興味関心はないようだけど、あくまで任務を忠実に遂行しようとする静かな殺気の青年。
狼藉者たちは顔を真っ青にして震えだす。
「お、おいアニキ、やべぇよ!こいつら!」
「な、なんじゃい!たかだか優男2匹くらいじゃねぇか!殺っちまえ!」
ボロボロの学ランを着た首領格が、子分達に檄を飛ばす。今どきそんな格好は流行らないと思うけど。
しかし、彼らの震えは止まらない。それは、この二人の恐ろしさを知ってるから。
「あ、アニキは戦ったことがないから知らないんスよ!こ、こいつらは…」
背が低くサルのような顔つきの子分が何かを言おうとしたとき、その首筋に、にこやか男の白刃が触れる。
…居合い用とはいえ、動かし方次第では皮膚が裂けるんだけど…。
「ねぇ、そこまで知ってるんだったら黙ってくれないかな?僕も今日はイライラが当社比150%増量中なんだよね」
「数学の小テストで赤点を貰ったのはあんたが普段真面目に授業を受けず寝ているからだ。人に当たるな」
的確なツッコミだった!
「あれぇ、一君って普段から座ったまま寝てるって絶賛の噂だけど?」
「…噂など信じるほど堕ちたか、総司」
二人が談笑ムードになったと感じたのか、不良グループのサル顔は刀を弾き飛ばして総司と呼ばれた青年に殴りかかろうとする。
しかし、それが叶うことはなく。
「ギエエエエエエ!」
サル顔の男の手が、裂けていた。
「ほら、余計なことすると、腕の腱まで刃が達するよ?」
「…不幸だったな。機嫌斜めの総司はいつもこうだ」
言いながらも、刀を抜き放つ、一と呼ばれた青年。
とはいえ、私は彼らをよく知っている。

 同じクラスで、片や暴力的で教師にも平然と噛み付く不良、沖田 総司(おきた そうじ)
片や、抜群の頭脳で去年の学期末考査学年2位の秀才、しかし何を考えているかまったく読めない謎多き青年、斎藤 一(さいとう はじめ)
そして共通することがあるとすれば。
「や、ヤベェよ!こいつら、オレ知ってますよ!薄桜学園で歴代最強と呼ばれる生徒会、通称…」
言葉は続かない。
斎藤さんの白刃が、彼の学ランの脇を、身体スレスレで貫通していたから。
「『新選組』だ。これだけ言えば図体だけデカくて知能はミジンコ以下の貴様らでも十分分かるだろう」
赤に白のダンダラ模様の腕章、その中央には、金でこれでもかというくらいのインパクトで書かれている『誠』の文字。
「ま、そういうことでさ、死にたい子は前に出てよ。臓物ぶちまけるハメになるけどね」
いよいよ首領格の顔が真っ青になる。
「せ、先週肥後学園の宮部を再起不能にした挙句自殺未遂にまで追い込んだって噂の新選組…だと!?」
「おう。分かってんならそれ以上は暴れんじゃねぇ。命は大切にしろよ」
もう一つの声が後ろから掛かる。長い棒の先には、煌めく槍の穂先。
槍術部のエース、だけど既に3年生を2回やっている留年(ダブ)りの常連、原田 左之助(はらだ さのすけ)
いずれも生徒会『新選組』でもっとも敵に回してはならない人間として周辺校の不良たちから恐れられている3人が集うと、相手には碌なことにならない。
「退かないってんなら、いっちょ暴れるか。総司!斎藤!」
新選組の戦い方はこの包囲だ。
敵が誰かと切り結んでいても関係ない。脅威は集団戦法で叩く。
原田さんの槍が突きを連続で繰り出し、慄いて下がる雑兵に斎藤さんと沖田さんが斬りかかる。
逃げ場はない。武器を捨て、土下座する不良たちに縄をかけるのは、馬鹿力の巨漢で有名な、相撲部の副将、島田さんだ。
「危なかったですね、雪村(ゆきむら)くん」
「あ、いえ、大丈夫です」
「そうですか。それでは俺はこれで。オラお前ら歩け!」
連行されていくのは恐らく、彼ら新選組が『屯所』と呼んでいる、生徒会特別室だろう。
その背中を見送っていると。
「よう千鶴(ちづる)、今日も今日とて大変だな、お前も」
私を気軽に呼ぶのは、さっきまで殺気全開で槍を突き出していた原田さんだ。
「大体お前はスカートが短すぎんだ。だから声掛けられるんだよ。先週だってヘンなオヤジに『スカートの中撮らせて』って追い回されたばかりだろ」
「あ、あはは…」
お恥ずかしながら…。
「あれぇ?左之さんが依頼したって情報もあるんだけど?」
「総司、俺はそんなことせず槍の先にカメラを取り付けてだな…」
「もう、原田さんっ!」
顔が熱くなった私が声を出したところで、みんなが笑い出す。
それが一段落して。
「よし、そんじゃ戻るか」
私たちは、歩き出す。

恐ろしい獣たちが集う、と全校生徒からも忌避される、だけど誰よりも情熱的な人たちが集う、生徒会室、新選組の屯所へ。
桜が、少しずつ、その花を開かせる。
もうすぐ新学期。新しい生徒達を迎える準備だってあるし、いつまでもこのままと言うわけにはいかない。
「もっと強くならなきゃなぁ、私も」
囁く言葉は、春風に舞い上げられ、どこか遠くへと飛んでいった。


あとがき

 ってことで薄桜鬼SSLのepicureanヴァージョンお楽しみいただけましたでしょうか?
今回の作品では薄桜鬼の外伝『薄桜鬼SSL』を骨子に、ちょっといろいろほの甘エロ甘なお話にしていこうと思って若干の改変を加えています。

1.生徒会長が風間ちー様ではなく…?
⇒これは後々改変を加えて何とかする予定です。ちー様は3年生で千鶴のストーカー的何かにする予定です(鬼

2.先生は?
⇒本筋では土方さんたちも先生でしたが、今回の作品では土方さんも生徒です(生徒会副会長、3年生)
  作中で名前が出る先生は生徒会顧問の近藤さんと、井上建設社長兼食堂のおじさんの源さん、音楽教師から美術教師にジョブチェンジした伊東さんくらいです。
  …山南さんまで生徒です。絶対校医が似合うと思ったのに。

3.千鶴はお色気担当です。
⇒パンチラパンモロは当然ながら、主に総司と左之さんにセクハラされます。これは決定路線で。


また弄る箇所増えたら弄ります。相坂でした。

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