ある日のお茶会にて。
「時に理樹君。今度の日曜日、我が家に招待したいんだが」
「ホントに突然だね」
僕の答えなんか最初から聞いていないように、次々に話を提示する。
「とりあえず日曜日の10時に校門に来てくれ。悪いようにはしないさ」
最初から行くことは決まりきってしまっているようだけど、僕としては正直…。
「行きたくない、って言ったら?」
「破局確定だ」
こうなったら、もう行くしかないわけで。


mさんのサイトのSS投稿掲示板で書いて潰したボツネタ書き直しSS『くるがやけ』


 そんなこんなで日曜日。
「うむ。来たな。では乗ってくれ」
「…」
あの、来ヶ谷さん、仮にも学生ですよね?
なんで学生のためにわざわざ黒塗りのタクシー…というより最早ハイヤー…が来るんですか?
「時に運転手。クレジットカードは使えるかね?」
「勿論ですお客様」
「うむ。では出してくれ。理樹君、いつまでボサッと突っ立ってやがる。おっ勃てるのはイチモツだけにしておけ」
相変わらずお下品ですね!なんて言う勇気があればいいんだけどなぁ。
「捕って食ったりしないから乗るといい。運転手もノンケだ」
「…嫌な響だなぁ…」
なんて言いながら、後部座席の来ヶ谷さんの隣に座る。
「ってこのタクシー高いんじゃないの?」
「そこら辺は問題ない。理樹君は黙って乗っていればいい」
「それでも」
「いいから」
「うー…」
そう言われてしまうと惚れた弱みか、強く言えなくなるのが僕の悪い癖だ。
運転席の初老の運転手さんもきっと内心『ヒモだなこいつ』なんて微笑んでるんじゃないだろうか。
気が重くなり、財布が入っているポケットに触れた手を戻す。
「第一マジックテープの財布で支払いは任せろ!なんて言われても女のプライドが傷つくぞ」
「えー」
学生だからマジックテープの何が悪いって言うんですか!?
そうこうしているうちにドアが閉まり、車は走り出す。
「どうせ払うのはカードの引き落とし口座に指定している親の口座だ。気にすることはない」
「いやいやいや普通それ気にするから」
「なら理樹君がマジックテープの財布で支払うかね?多分片道で諭吉1人と半分は行くと思うが」
まだそのネタ引っ張りますか。てか片道でそんなに掛かる家ってどのヘンにあるんだろう…。
車は市街地を抜け、郊外の高速道路に乗り、ぐんぐん加速。
来ヶ谷さんは外を見ながら、どこかあまり乗り気じゃない目で景色を追っている。
「実家、嫌いなの?」
その問いに来ヶ谷さんは。
「好きなら今の学園にはいないさ。なんというか、私にはとても荷が重い家族でな…」
「…」
「北斗神拳の伝承者とか」
「いやいやいやそれは絶対無いから」
「何故ないと言い切れる?」
「いやいやいやそれはフィクションだから」
冗談だ、絶対この人家に帰るの楽しみにしてるよ。
「実際のところ、実家なんてもうだいぶ帰っていないからな。よく分からないんだ」
「ふぅん…」
確かに今年のお盆は件の事故から復活して退院したばっかりの来ヶ谷さん、普通に寮にいたしね。
去年のクリスマスも『漆黒の髪のぱんつ狩り』が出現したってニュースを聞いたあたり、多分来ヶ谷さんだったんだろう。
「まぁそんなことで、暫く寝ているといい。どうせ緊張して眠れなかったんだろう?お利巧な理樹君は」
「う」
見破られてます。
だって、仮にも彼女の実家だよ?当然そこは敵の根城…じゃなくて。
ご両親がいるわけで。勿論気に入ってもらえなかったら後々の交際に色々と悪影響が出るのは間違いないわけで。
「安心しろ。少なくとも私の交際に色々言う人間ではないし、少なくとも母が理樹君を非常に気に入っているからな」
「え、どうして僕のことを?」
「うむ。女装した理樹君の写真を見せた」
「アンタって人はぁっ!」
どうやら僕はとんでもない勘違いを彼女のお母さんにされているようです。
「ここまで可愛い子ならフリルいっぱいの可愛い服も似合うだろうって」
「帰っていいですか!?もう高速道路で下ろしてもらっていいから!」
しまった、心の声が素で出てしまった。
「勿論却下だ」
ですよねー。
そんなことで、市場に引かれていく子牛の気分を味わいながら、絶望を載せたタクシーは高速を突っ走る。
でも、来ヶ谷さんのお母さんだから、きっと相当クールな人なんだろうなぁ。なんてちょっと楽しみにしてみる僕だった。


 タクシーは1時間半くらいで僕たちが住んでいる街から3つ隣の街の閑静な住宅街に到着する。
高級住宅街だけあって、いたるところに豪邸とか、凄い門構えの家がある。止まってる車も外車とか高級車。
あ、新型GT-Rだ。どこかの相坂さんにこんな車を考え付いた●ーンはニュルブルクリンクで牛に轢かれて死ね!と言わしめた、
なんかこう、ちょっとアレなデザインの高級車だ。僕にはよく分からない車だけど…。
「あぁ、そろそろだな。特に身構えることなく、自然体でいるといい。母はその辺敏感だからな」
「へぇ…」
やっぱりできる女性ってプライベートは緩い空気のほうが過ごしやすいんだろうか。
やがてタクシーが一番奥の一際大きな、言うなれば城を思わせるお屋敷に横付けするころ、緊張感がマックスに。
そんなこと気にせず、カードで支払いを済ませた来ヶ谷さんは、そのまま僕の手を引いてタクシーから降りる。
「さて、行こうか」
「ちょっと待ってっ!心の準備っ!」
そんな暇を与えないのもこの人だと分かっている。だけど言わずにはいられない。
「だから特に身構えるなと言うに。安心したまえ。誰も捕食まではしない。精々女装程度だ」
「それが怖いんだってば!」
あぁもう何なんでしょうかこの家庭は。
そんな僕は、来ヶ谷さんに抱き締められた。
拳一つ分くらい、大きな彼女の身体。そして、久しく忘れていた、母さんと同じ香り。
「とりあえずこれで落ち着くだろう?理樹君はこうされると弱いからな」
「…」
閑静な高級住宅街だから、誰も気にしないのか、それとも誰もいないだけなのか。
ともあれ、彼女の胸の中で深呼吸。うん、いい香り。そして、身体から余分な力が抜けていく感覚。
「落ち着いたか?」
「うん」
「よし行くぞ」
「待って、あともう少し」
「五月蝿い黙れ」
「…」
もう、有無を言わさないようです。結構すぐ行っちゃうんだね。仕方ないね。
かくして僕の身体は、城の入り口を思わせる重厚な扉に吸い込まれていくのだった。

 ちょっと長い前庭を通過して、石畳をコツコツ音を立てながら歩く来ヶ谷さん。その後ろをトボトボ付いていく僕。
なんかこう、気を抜いたらSPが出てきてHOLD UP!!!ってやられないか本当に怖いくらいの豪邸だ。どうしたらいい?


ニア とりあえず全裸になってみる
  とりあえず全裸になってみる
  とりあえず全裸になってみる

全部選択肢同じじゃないか!
無論その勇気はないので却下。SPじゃなくて本物のポリさん呼ばれちゃうしね。
「何を死人みたいな顔をしているんだ理樹君。その顔はベッドの上で私に精根全て奪われたときに見せてくれ。もっと顔を紅潮させて」
「いやいやいやそれ完全にイッちゃってますから」
性的な意味でも肉体的な意味でも。
「さて、そろそろだな」
長い石畳の道を終えると、見えてくるのは、これまた重厚な扉だったりします。
この先にどんな鋭い眼光のママさんが待ってるんだろう。ドアを開けた瞬間ウチの子に近寄るなこのロリショタフェイスが!と
突っ込まれやしないかビクビクしてると。
「ただいま」
「って平然とドア開けてるし!」
ちょっと待ってよ来ヶ谷さん心の準備させておくれよ!と大声で叫ぼうとしたけど声が出ない。


 目の前に、美少女がいた。
凄いフリルがたくさん付いた、薄いピンクのゴスロリドレス。そしてシルバーブロンドの髪をフリルのリボンで結わって、
手には白い兎のぬいぐるみ。ふわふわした笑顔の美少女だ。
………ただ、その鎖骨の下の肉は、言うなれば凶器です。
105cmはあるとみた、その胸は、来ヶ谷さんの90cmを圧倒的に凌駕する、まさに爆乳。
それでいながら身長は140cmをちょっと越えたくらい。胸さえ見なければ小学生と言われても信じてしまいそうだ。
「あー、リズちゃんだー。おかえりリズちゃん♪」
声もふわふわですよ奥さん!もう緑川さんが非ロリから微ロリになったのが分かるくらいだ。ロリ最高!
…って、いい加減この美少女の正体を明かしてもらわないと。
「えーと、来ヶ谷さんの妹さん?」
「生憎だが私は一人っ子だ」
「じゃ親戚?」
「こんな可愛い親戚ならとっくに陵辱しているさ」
そんな危ない発言をサラリとする人、嫌いです。
じゃ誰なのさ。
聞く前に、ふわふわ美少女が口を開いた。
「えーと、キミが理樹くん?リズちゃんから話は聞いてるよー」
「だからリズで呼ぶのはやめろと」
「えー。可愛いからいいよー。リズちゃんはリズちゃんだし」
このテンション、小毬さんに何となく似てるな。うん、ホント何となくだけど。
でも僕の話を聞いているって事は、少なくとも来ヶ谷さんと親しい人ってのは間違いないと思う。問題はそれがどんな続柄なのか、ということ。
「えーと。僕のことどれくらい知ってるんですか?」
恐る恐るたずねてみる。ゾウさんの大きさまで知ってるとか言ったらぶん殴っちゃうぞ☆
「んとね。女装が凄く可愛いってところまで知ってるよー」

 決まりだこの人来ヶ谷さんのお母さんだ!
もう一瞬で線が繋がりましたよ。てか画面の向こうの皆さんはとっくにお気づきでしょうけどね。
お人形さんみたいな感じのロリフェイスに、情欲を掻き立てるゴスロリ、そして爆乳。
来ヶ谷さんが美人で巨乳なのはきっとお母さんに似たからに違いない!西園さんあたりに呪いで10回殺されそうな勢いだ!
「紹介しよう…これが私の母、来ヶ谷=アルテミシア=唯だ」
あ、アルテミシアってことは…やっぱり欧米系なんだ。そりゃそうだよね。シルバーブロンドの髪に色の付いた瞳。
ってことはお父さんが日本人って感じなんだろうか。よく分からないけど。
「もー。昔みたいにママって呼んでくれなくちゃヤダー」
表情が子どもみたいにコロコロ変わる可愛いお母さんです。胸さえ見なければ。
でもあの来ヶ谷さんが子どもの頃お母さんをママって呼んでたのはちょっと意外かも。
「理樹君、分かっているだろうな」
「うん。みんなにもこの微笑ましいエピソードを」
「地雷踏んでるよー」
えぇ分かってますからママさん。ちょっとは僕に勇者の余韻を下さい。
さすがに殺されるのはアレなので、直後にトリプルアクセル土下座という超ウルトラC級の技で全力で謝っておいた。

 「じゃ立ち話もなんだから入って入ってー。あ、リズちゃんはママと一緒にお茶淹れようね」
「む。今日は私と理樹君二人で客人だ。客人に茶を淹れさせる習慣が来ヶ谷家にあるとは驚きだ」
いつもの口調で食って掛かる来ヶ谷さん。どうやら反抗期のようです。
そんな来ヶ谷さんに全然動じないのがお母さんたる所以だろうか。
「えー。リズちゃんはママとお茶淹れるのイヤなのー?」
「ぐっ…」
そこでひるまないで下さいよ。相手は仮にも実母でしょ?
「それにリズちゃんが知らないだけで、来ヶ谷には来ヶ谷の技があるんだよー?だよだよー?」
来ヶ谷さん完全沈黙。
「で、理樹君は私が淹れたキムチティーと母が淹れたミルクティー、どっちがいい?それとも私たち親子のパンティーをご所望か?スケベ理樹君は」
なんでそうなるんですか。
「うわー、理樹君フェティッシュー」
発音が美しくても汚らわしい意味の英単語って最早美しくないですよね。
そんな僕たちをふわふわ笑顔で見守った後、お母さんはキッチンへと消えたのだった。


 あとがき。

はい、コレ正直続きは書きません。ボツ作品です。
期待されても希望されても書く気はありませんのでご了承ください。

相互リンクさせてもらっているmさんのサイト、TRAFFIC JAM様(理姫ちゃんの故郷)にあるSS投稿掲示板にて一度公開した、
来ヶ谷さんのお母さんとお父さんのお話なんですが、なぜかお父さんがルーデル大佐だったり、お母さんが超ロリだったりと
ぶっちゃけありえなさ過ぎる展開のため削除しちゃった作品の、冒頭部分を書き換えて公開してみました。
ちなみにお母さんの名前は相坂のオリジナルです。

アルテミシアにしたのはちょうどオリオン座が綺麗だったから。ダメですか?
唯にしたのはけいおん!の影響ではありません。唯湖さんの唯。じゃお父さんは湖って付く名前なのかな。
そんな風に適当に書いただけなので気にしないで下さい。そのうち正式設定が明らかになったらそっちに戻すかも。
ってことで相坂でした。

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