ぱちゅんっ、ぱちゅんっ。
水音が響くホテルの個室、まさに肉と肉のぶつかり合い、人、それをセックスと呼ぶ。
そのセックスに嬌声を上げ、舌を出してよがってるのは、俺の最愛の人だ。
「はぁっ、はぁっ」
息も荒く、子宮の入り口に届く俺のモノが、内側から彼女の内臓を押し上げ、アヘらせる。
しかし奥に行けば行くほど締め付けが強くなり、俺もそう長く持たないことを本能が告げる。
「なぁっ、琴羽っ!琴羽っ!俺っ、俺ッ!」
もうダメだ、暴発する!冷静かつ的確にそんな判断をしているが、実際かなり危険。このままだと。
俺は、彼女を孕ませてしまうだろう。メティスパサー同士は妊娠する確率がかなり低いというけど、そんなの人体の神秘の前には、
何か意味を持つだろうか。答えは否。だから、俺は正直に言うんだ。
「琴羽っ!孕ませるぞ!孕ませて、お前を嫁に貰うっ!」
「なっ!?ひっ!ひゃあああぁぁぁぁ!」
もう彼女に孕ませるとか結婚しようとか散々使い古したくらい言っているつもりだし、今更否定するわけがないのに、凄い傷つくぞ、そのリアクション。
と、下半身に何か生ぬるい感覚がジワッ、と広がる。
それが、琴羽の尿だと気づいたのは、ツンと鼻を突くアンモニア臭がした瞬間だった。
「れ、れれる、れちゃってりゅっ!」
ブラン、と舌が垂れ、目を白黒させながらおもらしの快楽を味わっている琴羽。そのあまりに幸せそうな顔を見ると、俺の愚息も興奮し。
「んあぁぁぁぁああああっ!慶司!けいじに孕ませられれりゅぅっ!」
暴発が激しくなった頃、彼女の出す尿の勢いも、少しだけ上がっていた。


---恋する琴羽ちゃんは、大好きな慶司くんに愛されるとうれションしちゃうの---


 「うー、慶司を汚しちゃった…」
「だから気にすんなって」
人目を盗んだラブホテルでの逢瀬が終わり、これまた人目を盗んで脱出。しかし終始こんなテンションだ。
「むしろ愛しい彼女のおしっこで清めてもらえて、俺としては最高の気分だぜ?」
「なっ、ば、バカっ!」
不意打ち。ポカポカと頭に炸裂する拳骨も全然痛くない。むしろその可愛さが痛い。たまりません、琴羽さん。
「やべぇ、本気で今すぐ結婚したくなってきた」
「っなっ!」
嘘はない。本気で結婚したい。
普段からそうだ、俺は思っている。琴羽との結婚生活。毎日裸エプロンでお出迎えしてもらい、熱くとろけるようなキスでただいまを言う。
子供は男も女も構わず最低4人。バスケチームを作りたいんだ。子供たちと、俺が選手兼監督。琴羽がマネージャー。
そんな日々を夢見て、帰ってくるなり彼女を孕ませる毎日。それが相手にとっても俺にとっても幸せかなんてのは分からない。だけど。
「ずっとそばにいてくれよ?急にどっかに行くなんて…ってぇっ!」
「ふぇぇぇぇ…」
そんなとびっきりクサいセリフを吐こうとした瞬間、彼女が俺にしがみ付き、そして。
「もれ、ちゃった…」
また、おしっこしておられました。
「うー…<<マーメイド>>!」
彼女のメティス、<<マーメイド>>は水流を弄ったりするだけのものではなく、体に付着した『液体』を飛ばすことも可能。
幸いココは人通りの少ない裏路地。ここも人通りはなく、おもらしがバレる心配も今のところない。琴羽は無事かどうか分からないが、
とりあえず身体と衣服、下着に付着していた水分をある程度飛ばせていた。しかし。
「うー、臭いまではどうにもならないなー…」
「あ、俺ウェットティッシュ持ってるぜ」
「ホント?貸して!」
そして俺の返事を聞くまでもなく、差し出されたウェットティッシュを掠め取り、パンツを膝まで下ろしてその場にしゃがみ込む。
「こっち見たら殺すから!」
「いや、今更だろ」
「それでも恥ずかしいものは恥ずかしいんだから!」
拭きながらジト目。横目でチラッと見たら目線が合う。これは殺される。
「でも良く持ってたわね、ウェットティッシュなんて」
あたしも普通のティッシュくらいしか持ってなかった、と付け加える琴羽。
まぁ、理由は不純な動機。上手い具合に欲情してしまった場合、ホテルと違って屋外はそういうものがまったくない可能性のほうが高い。
だから証拠隠滅用にほのかな桃の香りがするウェットティッシュを買っておいたのだ。これならイカっぽい臭いも消せて侵略成功でゲソ。あれ、何か違う。
「うー。でもぱんつに染みこんだ臭いまでは取れないか」
「ノーパンとか言ったら怒るからな」
「バカっ!」
ウェットティッシュの袋を顔にぶち当てられました。


 結局デートはそこで打ち切り。まぁ、ホテルでヤることはヤッたんだし、別に不満は感じないんだけどね。
そんなこんなであたしは部屋に帰ってくるなりお風呂。風花が『早かったねー』と心配する頃には、既にその声もシャワーでかき消されていた。
「ふぅ…」
熱いシャワーが身体に優しい。首筋から胸、そしてお腹へとスポンジをどんどん下げていく。そして、不意にお腹を撫でてみる。
「…今日こそ、出来たかな?」
あたしにだって夢はある。夢くらいあるのほうが正しいだろうか。そして、それを現実にしたい。
まだお互い早いかもしれないけど、慶司と結婚したい。それが出来ちゃった結婚でも全然構わないし、そのほうが嬉しい気がするのだ。
大切な人と自分が祝福されるだけより、大切な人と自分と、子供。すべてが同時に祝福されるほうが絶対幸せに決まっているし、それに。
「愛してるから、今すぐにでも孕ませられたい」
ずっと、ずっと大好きだった慶司。ホントは両思いだったし、彼女にしてもらえた。そして次は奥さんにしてもらいたい。その次は…。
「ママに、されたいな」
あたしって案外欲張りだと思う。たった一度の恋ですべてを彼に貰ってしまおうなんて思っている。
むしろ慶司は乗り気だし、今度の休みに実家に帰るときは既に慶司の家にお泊りすることだって決まってる。正式におじさんとおばさんに認めてもらわないと。
そんなこんなで女に磨きを掛けるために(もっとも今日はおしっこのせいだけど)シャワーを浴びていると言うのに。
「あぁ…っ」
優しい彼に孕ませられる、種付けされる瞬間。琴羽、愛してる。元気な赤ちゃんを産んでくれ!そんな声が耳朶に響いたかと思うや。
また、おしっこが尿道口から出て、太腿を伝い、個室の床に落ちていく。そしてシャワーで流される。
「ダメだぁ…あたしって、ホントダメ」
これがどういう現象なのか自分でも分からない。彼に愛されすぎて緩くなってしまったんだろうか。だったらそれこそ責任を取ってもらわないと。
それはそれとして軽く自己嫌悪交じりに脱衣所に戻る。火照ったカラダの責任、シャワーより慶司に取ってもらいたいな。そんな風に思いながら。

 「琴羽ちゃん、今日早かったね。速瀬くんと何かお話出来た?」
「ん、まぁね」
今日は予習復習が早く終わったとかで、久々に編み物をしている風花。もう長く見てなかったなぁ、風花のそんな姿。
それを横目に昨日買ってまだ読んでなかったファッション雑誌に手をつける。あ、付録ってそう言えば凄い可愛いポーチだったんだ。
でもこの間ポーチ買ったばっかりだし、これは風花にあげよう。
「風花、これあげる」
「え、いいの?これ目当てで買ったんだったら悪いよ」
「まぁ、それもあるんだけど、ポーチこの間慶司に選んでもらって買ったばっかりだから、いいよ」
「あ…そういうことなら。ありがとう、琴羽ちゃん!」
ふわふわした白い外装のポーチ、ちょっぴり勿体無いけど、あたしより断然風花に似合うはずだから。それに。
「やっぱり速瀬くんって優しい?」
「どうして?」
「だって」
毎週末、何だかんだ言ってデートに誘ってくれる。学生で懐も痛いに違いないのに、ホテル代上手く捻出してくれたり、いい店を探してくれたり。
『どうせおしゃれじゃ琴羽にかなうワケないしな。だったら俺は、どこまでお前を引っ張っていけるかで勝負したい』
そんなこと言ってくれちゃってさ。どうせもうあんたにゾッコンなんだから、逃げようがないことくらい知っているくせに、まったくこの男は。
そんな彼だから、たまに心配になる。
「もふもふ〜♪」
風花やまなみ、ホントに慶司の周りは可愛い子が多い。そして特に、風花はあたしから見ても凄く女の子してる。
慶司は絶対にそれはないから、とあたしにいつだって言ってくれるけど、とっても心配なんだ。こんな可愛い子たちに奪われちゃうんじゃないかって。
だからじゃないかと思う。彼を引き止めたいから妊娠したいんだって本能がそうさせているのかも。
そう思って、ぶんぶんと首を横に振る。それはない。そんなことがあってはいけない。
「(慶司との間に赤ちゃんが欲しいのは、あたしの意思。つなぎとめるために妊娠するなんて、それは赤ちゃんに失礼だから)」
生まれてきてくれてありがとう。パパとママを選んでくれてありがとう。二人で子供にそう言える母親になりたいから。
ヘンな嫉妬も、いつものように考えないようにしよう。大丈夫。慶司に限ってあたしから逃げていくわけがないから。あたしが逃がさないしね。

 にしても。
こんな妙なクセが付いてしまったのはいつごろだろうか。少なくともアルゴノートに入部した段階ではそれはなかったし、当然その前もなかった。
かといって入部後にそれが発生したわけでもなく。そう、思い起こせば期末考査真っ最中の、二人きりの勉強会のときだろうか。
結局若い男女が同じ部屋にいればまともに勉強に手がつくはずもなく、なし崩し的にせっくす。翌日はあたしが苦手な物理と数学のテストだったのに。
危うく赤い数字を貰いかかったこと、今でもうらんでるからね、慶司!
それはさておき。
そのときも例のごとく、慶司はあたしを孕ませにかかっていた。
『琴羽っ!産んでくれるよな!?俺とお前の可愛い赤ちゃん!』
正常位で見つめられながらのせっくすはとても優しく、その瞳はただ肉欲で孕ませたい、征服したいという気持ちではなく、生涯の伴侶として孕んで欲しい、という
温かい何かを感じ取ることが出来た。迷いはない。あたしは叫んだ。
『孕ませて!慶司の赤ちゃん孕ませて!妊娠したい!大きなお腹をみんなに見せつけながら、あたしは慶司の妻なんだって証明したい!』
あたしでも、自分で何を言っているか分からなかった。後で慶司から言われて気づいたんだから。
そしてその直後だった。射精と同時に尿道口が緩み、おしっこが溢れてシーツを汚したのは。
その日以来だろう。そう言えばここで謎が一本に繋がった。
「ねぇ風花」
「もふもふー。ん?なぁに琴羽ちゃん」
といっても風花が何か知ってるわけがない。知ってる限りこいつも十分生娘だから。
「風花ってさ、最近その…漏らしたこと、ある?」
「漏らす…な、ななななないよっ!?」
漏らすの意味が確かに分かってくれたみたいだ。続ける。
「あたしはね、あるんだ。それも今日も、漏らしちゃったの。慶司が見ている目の前で」
「わ、わわっ、私、何も聞いてないことにするから、ねっ?」
ただ漏らしただけじゃなく、それが慶司の前だと聞いて顔を真っ赤にした風花は対話を一方的に打ち切ろうとする。そうはさせない。
「いいから聞いて風花。あたし、本気で悩んでるの!」
「…う、うん。分かった。聞くね」
同意を得られたところで、あたしは真相を語り始めることにした。

 「いくらなんでもあたしたちだって、せっくすくらいするわ。それは否定しない」
「うん…」
「それでね、んー。どこから話したらいいんだろ。ねぇ、風花?」
「それを聞かないでよー…」
顔を真っ赤にして涙目。この風花をフィギュア化したら絶対売れる自信が当方にはあります。
それもさておき。
「んじゃ結論から言っちゃうね。あたし、慶司とは今までコンドーム一度も使ってない。本気で、子作りしてるの」
「!?」
あ、さすがに顔が真っ青に。直後、激昂した彼女はいつもの人差し指を天井に向けるおしかりポーズであたしに詰め寄った。ってか顔近い。
「琴羽ちゃんっ!もっと自分を大事にしなきゃダメっ!もし今赤ちゃんが出来たって、それはきっと嬉しいことかもしれないけど、当事者同士には悲しい場合だってあるんだよ!?」
「子供が出来たら勉強どころじゃなくなるし、速瀬くんだって責任を取らなきゃいけなくなる、それが琴羽ちゃんには幸せなの!?」
おしかりが普通のおしかりじゃないことにビックリしたけど、まぁそれはそれ。いったん宥める。
「勿論生半可な気持ちじゃないわよ。メティスパサー同士は子供が出来にくいってのもあるけど、それを承知の上で子供が欲しいの。大切な彼の、たった一つの望みだから」
「それでも…」
「あたしはそれで十分だし、幸せ。たった一人しかいない大切な人に子宮までモノにされるのって、女の喜びだと思うから。っと、話したいのはそんなおノロケ話じゃなくて」
「話をはぐらかさないで!いい琴羽ちゃん!?うん、ちょっとそこに正座っ!大体琴羽ちゃんは…」
むぅっ。相談する相手間違えたか。
結局風花の説教部屋は風花が眠くなるまで続き、話の根本を話すことが出来なかった。


 そこで翌日、部室に赴いたあたしは、アルゴノートの菜緒先輩に相談してみることにした。
……相当いぢられそうだけど、風花よりは役に立つ…ハズだしね。うん。
「ほう。孕ませてやるとか結婚してくれと言われるとつい尿失禁してしまうんだな?」
「はい…」
ニヤニヤ。うん、これ絶対なにかたくらんでるよ。
ネタにされる前に逃げたほうがいいのか、そんな風に考えてると、意外や意外。菜緒先輩がすぐ答えをくれた。
「それは『うれション』というのだよ、沖原」
「うれション?」
どういう意味なんだろう。言葉から察するにおしっこのことだとは思うんだけど。
「どれ、おポンチに口で解説するのはどうも苦手だ。サイトを見せてやる」
むぅ。棘があったのは気のせい?
そんなあたしを尻目に、彼女がインターネットのサイトを見せてくれた。
「…」
そこは、犬の躾サイト的な奴。
そこに確かに『うれション』という項目があり、そこをクリックしてみると。
「子犬は優しくされると尿道が緩み、おしっこをする。それを『うれション』といいます…か」
「そう。沖原、お前は見事なメス犬っぷりを速瀬に晒しているだけに過ぎない。何も恥じることはないぞ」
目をキラキラさせて言われても複雑ー。というよりも。
「治す方法はあるんですか?」
「うん、ない。自然な改善に任せるのみだ」
「…ですよねー」
確かにサイトにもそういう風に記されていた。自然に治るものだから叱ってはいけないって。
「案外本当に速瀬の子を孕めば治るかもしれないな。よし、部室を今日一日お前たちに貸してやる。妊娠するまで抱いてもらえ」
「いや、結構ですから」
「遠慮することはないぞ。ラブホテル代だって決して安くはあるまい。この間だって1時間4500円のところから出てきたあたり速瀬の財布も厳しいだろうしな…プクククク…」
あぁ、見られてたんですね。この笑い声が憎らしい。
「そういうことだ。まぁ実際治し方は分からんが、それをある種の萌えコンテンツにすることで自分なりの解決方法を見つければいいさ。では私はお嬢様のもとに戻らねば」
「え、あ、はい。ありがとうございました…」
素直にお礼を言っていいものなんだろうか。菜緒先輩が振り向きざま。
「ちなみに上手い具合に出来たら教えてくれ。イロイロとしてみたいことがあるからな。プクククク…」
後ろから蹴り飛ばしても文句は言われないだろう。うん。
「うれションかぁ…」
とりあえず病気じゃないとは思っていたけど、まさか犬と同レベルとは。
「…嫌われないかな」
その程度で嫌う男ではないことくらい知っているのに、どうしても不安で、不安で。
だからあたしは、教室に急ぐ。が、途中で聞きなれた声が耳に入り、即座に柱に隠れる。

 そこには、慶司を叱る、風花の姿があった。
「だからね?どんなに琴羽ちゃんがいいよって言ったって、安易に妊娠させようとしちゃダメ」
「琴羽ちゃん、本気で速瀬くんを愛してる。だから、断りきれないんだと思うの。だから」
知ったようなことをいう風花。論点が少しずれていることに憤りを覚える。断る気なんて更々ないのに。
「だがそれでも俺はやめない」
「速瀬くん、そこに正座したいの?」
あーあ。もう見てられない。柱から出て風花に一発ビンタくれてやろうか。
そう意気込んだときだった。
「それでもやめる気はないよ。俺だって、安易にやってるわけじゃない。覚悟はある」
「速瀬くん?覚悟だけじゃ相手を想ってるとは言えないよ?」
「それくらい分かってる。産むのはあいつだし、痛いことくらい分かってる。支えていくことが相当大変なことだって、分かってる」
そう。
いざ子供が出来たら、産み、育てていかなきゃいけない。犬猫と違うのはそういうところだ。慶司だってそれが分かっている。
少なくともあたしは、そう信じているし、将来もその思いは変わらない。
「なら…」
「でもそれ以上に、あいつに伝えたいんだ。俺が琴羽に会えなかった時間、どんなことを想っていたか。再会できた今、どんな想いでいるか。それを形にして」
「…」
「委員長。ごめん。確かに俺の身勝手かもしれない。でも、俺は俺なりに、琴羽を愛している。最初から奥さんにするつもりでいる。どうか、干渉しないで見守ってて欲しいんだ」
「……うん。分かった。今までの話は聞かなかったことにするから。でも」
琴羽ちゃんを泣かしたら、その瞬間に敵だって判断するからね。
風花にしては厳しい言葉を彼に投げかけると、彼女は、そのまま元来た道を引き返す。
途中、柱の陰に隠れていたあたしに、耳元で囁く。
「数年越しの恋、叶ったらこんなにも愛してもらえるんだね。ちょっとうらやましいなっ」
またお部屋で話そうね。それだけ伝えると、風花は教室へと戻っていった。
「…」
どくんっ。さっきからもう漏れそうな感覚が止まらない。
たまらずそこにまだ突っ立っている慶司を捕まえる。そして何か言わせる間も与えずアルゴノートの部室に連れ込み施錠する。
「こ、とは?」
「…あんたの気持ち、立ち聞きしちゃった。ゴメン」
「…いいよ、紛れもない俺の偽りない気持ちだ」
「うん…」
どちらからともなく、重なる唇。そして。
「痛くても、苦しくても、産んであげたい。そして、世界で一番幸せな家庭を作っていきたいの。勿論、手伝ってくれるよね?」
「勿論だ。そう、想ったからさ」
不意に取られる左手。薬指に冷たい感触。
「ん…あ…」
そこには、銀色の小さなリング。
「昨日のデートの途中で、俺ちょっといなかっただろ?」
「ん…ナンパされて大変だったんだから…」
一瞬いなくなったと思ったら、チャラい男二人にナンパされて、危うく無理やり連れて行かれそうになったっけ。あはは。
「実はあの近くに銀細工のショップがあったからさ、前依頼してた分を取りに行ってたんだ。小遣いの3ヶ月分…かな?」
「…」
頬を伝う、生暖かい液体。続く言葉は、あたしが一番欲しい言葉だった。
「愛してる、琴羽。ちょっと気が早いけど婚約指輪として受け取って欲しいんだ。次の俺の誕生日が来たら、籍だけでも先に入れよう。今の俺にはそれくらいしかできないけど…」
「…」
ううん、それだけでもう十分だよ。これ以上願ったら罰が当たるに違いないから。
その罰なんだろうか。ふと、胸が熱くなり、そして。
あたしがスカートを捲ると同時に、白いぱんつを汚しながら、おしっこが盛大に噴き出した。
「こ、琴羽!?」
どうしたんだ!と駆け寄ろうとする彼に。
「うれションっ!うれションなのっ!病気じゃなくて、嬉しくて、緩んじゃって漏れちゃうって分かったのっ!これが。あたしの答え!入籍どころか今すぐ攫われて無人島で二人きりになっても構わない!」
「琴羽っ」
「こんなカラダにされちゃったんだから、結婚だけじゃ物足りないの!いっぱい愛して!赤ちゃんいっぱい作って!おばあちゃんになっても抱き締めて!」
「琴羽っ、俺の琴羽っ!」
おしっこの勢いが収まる頃、彼はあたしのショーツに指を掛け。
「このままじゃ生暖かくて気持ち悪いだろ?綺麗にしてやるから…」
「んっ、してっ。いっぱい、してっ!」
下げられるショーツ。内股をメインに伝わる、彼の温かい舌。
その日一日、部室は施錠されたまま、使えなかったのは別の話ってことで。


 そして週末がまた来た。
「慶司っ」
「遅いぞ琴羽」
「うんっ♪」
いつもどおりのデートコース。ただ違うのは。
「ホントに良かったのか?」
「ん?何が?」
「あ、いや、気にしてないんだったら、それで」
「…するわけないじゃん♪」
そう。今日はあたしにしては珍しい、ちょっと長めのスカート。
それにはちょっとしたワケがあって。

 「映画、良かったな」
「うん」
今日のデートコース、映画館からちょっと外に出るなり、人目に付きにくい大きな柱の裏に彼を連れ込み。
「どうした?」
「うん、あのね、映画のヒロインと主人公があたしと慶司に被っちゃって、興奮しちゃって、その…」
「ちぃ、出ちゃったから、おむつ、交換して欲しいの…」
長いスカートにした理由。それは。
スカートの脇をすこし捲りあげると、そこには大人用の紙おむつ。うれション対策として慶司と菜緒先輩が面白半分で考案したものだ。
「ねぇ、ちぃ、いっぱい出ちゃったから、早くしてよぉ…」
「あぁ。そしたらまずはトイレに行こう。いっぱい拭き拭きしないといけないしな」
「うんっ♪」
その映画はまさに今のあたしたちと同じ感じ。
幼馴染に必要以上に強がっちゃう女の子と、彼女のためにはどんな危険も厭わない男の子の物語。
最後のほうで『俺が無事に帰ってくることが出来たら…俺の子供、産んでほしい』ってセリフがあって、その瞬間におしっこが溢れて吸水ポリマーに吸われていって。
でも何故だろう。紙おむつしてるってだけで、なんかこう…。
「赤ちゃん作るはずなのに、あたしが赤ちゃんになっちゃった気分♪」
「むしろその方が練習になっていいだろ?」
「うんっ♪」
上手い具合に弄ばれてるんじゃないかって思う。でもそれ以上に。
「おもらし癖、躾してくれなきゃ、ヤなんだからね?」
この癖が治ってしまったら、慶司に捨てられそうで怖い。どうせなら永遠に治って欲しくない。
ずっとこのまま、甘えんぼ過ぎてどうしようもないあたしを、彼に躾けて欲しい。
「あとね、あとね」
「ん?」
あたしの手を引き、半歩先を歩く彼にあたしは言うのだ。
「今日こそ赤ちゃん、欲しいな♪」
自分で言って、またポリマーに吸い取られていくあたしのおしっこ。今日は、とても長い一日になりそうだ。


あとがき

構想1週間ようやく形になりました。琴羽ちゃんSSです。
っていうよりなんというかこう、キャラ作りが肝心ってところで、水に関係して(してねぇよ)おもらし癖=うれション属性を追加してみたんですが、どうでしょうか。
ちなみに反響次第ではうれション琴羽りたーんず!的な感じのSSも書いてみようかななんて。なんというか、こう、普通の人がしたがらないSSを書く、
それが相坂クオリチーなのかな。

ってかクロシェットさんにツイッターフォローしてもらってるのに、版権元がビクリツしないか心配な相坂でした。

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