その私生活がぶっちゃけると完全未知数な人っていると思う。
実際真人や謙吾みたいに、昔から一緒にいる人間だから分かるわけであって、この学園と言う狭い世界で、
どれだけの人間の休日の過ごし方を知っているかと聞かれると、それは素直に片手で数える程度だと思う。
だから、まさか彼女がそんな。そう思うしか、なかったんだ。


ついに相坂さんちでもあの娘が動き出しましたよ小ネタ『人は見かけによらず』


 秋の青空ってなんか、こう、凄いムカつくよね。
果てしなく続く蒼。もう夏が終わったからそこまで暑くないし、涼しい風が吹いているのはいいとして。
「〜♪」
主に左腕あたりから凄い柔らかい感触と、吐息が。
「お兄ちゃんとデートっ♪」
「理姫、ちょっと離れて歩こうよ…」
「ぶー。ヤだもん。離れたらお兄ちゃんすぐ逃げるから」
ぜーったい逃がさないよっ。今日の理姫は凄い強引だ。
ココは商店街。さっきまで僕と理姫は、日曜日絶賛満喫の兄妹仲良くウインドウショッピングなんざしていたのだ。
…満喫してるのは主に理姫だったけどね。
まずは、女物の服を売っているお店。理姫は制服こそスカート短い感じだけど、普段はワンピース系を好むことがよく分かった。
確かに、理姫って淑女って感じ丸出しだから、露出の多い服で出回るのはイヤなんだろう。
何より、誰かに肌を晒すことがイヤなのかもしれない。
…それはよく分かったから、僕に着せようとするのは本気でカンベンして欲しかった。
「あの花柄のワンピ、可愛くて絶対お兄ちゃんに似合うのに…」
「キミは僕に何をさせたいのさ…」
素で頬を膨らまして拗ねる理姫。もう何かと理不尽だ。
そしてさっきまではランジェリーショップ。この間ひまわり保育園の帰り道にいっしょに行く、と言った手前、兄としての威厳を保つため…。
もとい、半ば強制的に連れて行かれました嘘吐きましたごめんなさい。
今朝、ぐっすり眠りの底にあった僕を叩き起こしたのは、理姫の甘い声。
『あぁん…お兄ちゃん…らめ、らめなのぉ…』
『!!!』
何事っ!と思って目を覚ましたら。
『あぁん…お兄ちゃん…らめ、らめなのぉ…』
僕のボイス目覚ましが…ボイス目覚ましがぁ…。
大事なことだから2回言いました。ボイス目覚ましを勝手に吹き替えてやがりましたこの妹様。
(それまではドナルドの『らんらんる〜♪』が延々鳴り続ける目覚まし。理姫は本気で怖がってた。あんなセンスいいのに)
「第一あんなので起きられるお兄ちゃんがヘンなんだよ」
「いやいやいや、絶対ナチュラルハイな感じでテンション上がって目が覚めるから」
「えぇっ…わたしの、えっちな声より?」
「!!!」
ほら、その発言禁止。リーマンがユンケルを噴き出しながらこっち見てるよってかこっち見るな。
「ねぇっ、えっちな声イヤ?わたしのえっちボイス、イヤ?」
「…」
「いいよ、って言うまで言い続けるんだから。わたしのえっちボイス…」
「だぁもうっ!」
「もごっ…」
口を覆って路地裏に連れ込む。警察呼ばれないか非常に心配だけど。
だいたい男をランジェリーショップに連れ込むだけで異常なのに、試着室にまで拉致ろうとするなんて、もうこの妹っ!
どんっ。何かにぶつかった。
「きゃんっ…」
「わっ、ご、ごめんなさい」
慌てて向ける視線の先。
「いたたたた…」
黒のロングヘアーにメガネ。白のブラウスに黒のミニスカート。黒のオーバーニーソ、茶色の編み上げブーツ。
なんかこう、凄い美少女が、目の前で見事に尻餅ついていた。
周りには紙袋と、それが破れて飛散した薄っぺらい本の数々。そう、強いて言えば西園さんが持ってそうな類の、あれ。
…。
西園さん菌は、やけに繁殖力が強いようです。
「…」
にしても、見事に尻餅ついてるなぁ。
白のぱんつが丸見えだ。
それは、心なしか真ん中のあたりが濡れそぼっていて、ちょっと自己主張の強いシミが明らかに僕の目を盗んでいた。
「えー、こほん。お兄ちゃん、熱視線送っちゃダメ」
「え、な、なななななんのことかな?」
何で動揺してるんだか。僕、いつからこんな子になっちゃったんだろう。
「っ!」
女の子のほうもやっと自分がぱんつ丸見せだったことに気付くと、すぐにスカートをばっ!と下げて、ぱんつをブロック。
もうちょっと拝んでたかったけどね。じゃなくて。
「キミ、大丈夫?」
「え、えぇ何とか…あっ」
コレクションが無残にむき出し。ここが人通りの殆どない、少なくとも現在は僕と理姫と女の子しかいない路地裏だからよかったけど、
普通の大通りでこれやったらオオゴトだよ。まったく。
「拾うの手伝うね」
「あ、いえ、その…」
「いいよ。わたしもその手の本、理解あるから」
「〜〜〜〜っ」
あぁ理姫。そのエンジェリックスマイルも、今のこの子には凄い痛いんだってば…。
とりあえず、空気読もう?
そんなこんなで無事に本を拾い終わり、やっとその子とマトモに視線がぶつかる。
「あ…」
「?」
「直枝…くん?」
「え?」
「…っ!」
直後、彼女は僕を軽く跳ね飛ばし、その場をダッシュで立ち去った。
秋の昼間の大通り、白いぱんつの天使は、あっという間に消え去った。
何か文学っぽい書き方だなぁ。芸術の秋だなぁ。真人と謙吾は『ゲイ♂術のアッー!き』でもしてるだろうけど。うん、黙れ僕。
ガチムチパンツレスリングなんて、ニコ動だけで十分だって。
でも、あの子確かに僕を直枝くんって呼んでたなぁ。
…あんな可愛い子の知り合いなんていた覚えがないし、BL同人大好きな女の子で思い浮かぶ西園さんが僕をくん付けで呼ぶとは思えない。
美鳥だったら理樹くんになるはずだし、第一ウィッグでも被らないとあんな黒いロングヘアに出来るはずがない。
「誰なんだろうな…」
「…ふふっ。お兄ちゃん鈍感さんっ♪」
まぁそこがいいんだけどねぇ…。
なんて小声で囁く理姫は、どうやら彼女の正体が分かったようだ。
しかし何度聞いても教えてくれず、教えて欲しければここで尻餅つくからわたしのぱんつ、拝んで、なんて凄い無茶言うから、
已む無く渋る理姫を引っ張って、今日は家路につくのだった。


 翌朝。
なんかこう、サザエさんが終わったあたりから、日曜日って憂鬱になるよね。
相坂さんはサザエさんが終わる頃になって『あぁ、繁忙時間終わった』と安堵の声を上げるらしいけど。
僕らは学生で営業職ではないし、その気持ち全然分からないや。
ともあれ、月曜日でしかも雨。非常に憂鬱な朝だ。
「ふぅ…」
「お兄ちゃんさっきからため息ばっかり。ご飯美味しくない?」
「違うよ。なんかこう、雨と月曜日って最悪の組み合わせだよなぁって」
「そうだね〜」
理姫も同意してくれる。
昔どこかの兄妹ユニットが『雨の日と月曜日は(原題"Rainy days and Mondays")』って歌を歌っていたけど、
ホントその通りだと思う。憂鬱にさせる材料がしっかり揃っているのだから。
「ねぇお兄ちゃん」
「ん?」
「今日も、ニコニコハッピーで頑張ろうね♪」
「…そだね」
この雨でも、太陽顔負けのスマイルだ。うんと言わざるを得ない。
ともあれ、朝食を済ませると、そのまま着替えて学校へ。
途中、昨日買ったばかりの下着をつけるために全裸になった理姫と遭遇し、また例の『あっ…♪』を聞く羽目になったけど。
いい加減自重してください。仮に兄でも男なんですよ男。


 着替え終わり、身支度が整うと、二人揃って外に出る。
「あっ」
「あっ…!」
「…♪」
外に出るなり、隣の部屋から出てきた同じクラスの杉並さんと鉢合わせる。
「お、おは、おはよう、な、なおえ、くんっ!」
「あぁ、おはよう杉並さん」
「…っ」
そのまま俯いてそこを立ち去ろうとする杉並さん。何か悪いことしちゃったかな?
しかし、理姫が瞬時に手を伸ばし、その手を掴む。
「えっ…」
「ねぇ杉並さん、昨日は、お兄ちゃんがごめんね」
「え、あ、だ、大丈夫ですっ、お尻、ちょっと打っただけ……え?」
「♪」
どういうことだろう。
目の前にいるのは杉並さん。僕と理姫のクラスメイトだ。
それはどこにでもいる、ちょっと地味なキャラで、少なくとも昨日のあの子では…ないはず。
「ねぇ理姫、昨日の子って、杉並さん?」
「うん。わたしの目、間違いないよ?」
いやドがつく天然のあなたがそれを言いますか、妹殿?
なんて思っていると、目の前の女の子の三つ編みが簡単に解け…。
理姫が、いつのまにかリボンを奪ってました。手癖の悪い妹でごめんなさい、杉並さん。
「足りない分は多分ヘアピースか何かで補ってたんでしょ?髪型変更とメガネって、一番お手軽な変装だもん」
「…」
「おおかた、勝沢さんとか高宮さんに見つかりたくなくて、上手い具合に変装したつもりなんだろうけど」
わたし、一発で分かったよ。えっへん。
胸張って言うところじゃないよ。うん。
「…」
「だからお兄ちゃん、ちゃんとごめんなさい言おうね?」
「え、あ、うん。昨日はゴメンね、杉並さん」
「…」
しかし杉並さんは沈黙したままだ。
「杉並さん?」
「…直枝くん、昨日、私のぱんつ、真剣に見てたよね?」
「え、あ、え、えっと…」
慌てる必要なんてないのに、なんで。
そのまま、杉並さんは続ける。
「あの時ね、本当に恥ずかしかったの」
「男の子同士がラブラブする本を読んだから?」
「…うん」
理姫の質問に、やけにしおらしく答える杉並さん。
「あそこがね、ジュンっ、てしてきて、気が付いたら、ぱんつが湿ってて、このままじゃ恥ずかしいから、本を適当に買ってお店を出て」
直後に、裏路地に理姫を連れ込んだ僕にぶつかったらしい。
そう言えばあのあたり、通称『腐女子通り』だったなぁ。そっか、そういう由来が…。
「だから、見られて恥ずかしかったんだから…。もう、お嫁にいけない体にされちゃったんだから…」
「いやいやいや何を?」
何が言いたいのかさっぱりな僕の目の前で、杉並さんのスカートが上に捲りあがり…。
「もう、恥ずかしいところ見られたから、平気。ねぇ、直枝くん」
「私のぱんつ、もっとじっくり見たくない…?ぱんつの中まで、しっかり見てみたくない…?」
「…え”」
何を言いたいんですか、あなたは。
杉並さんの手はどんどん動き、果てには、小さなリボンがアクセントの、黒の小さなひらひらが付いた白ぱんつが露になる。
「もうお嫁にいけないんだから、直枝くんに、貰ってもらうの。ね、恥ずかしいから、早く…」
早くって、何を…。
と、気が付くと理姫のチョップが杉並さんの頭にサクッとめり込んでいた。
「理姫ちょ〜っぷ♪」
「理姫、技を発動した後に技名叫ぶの禁止」
「え、えへ…」
舌出して『やっちゃった♪』ってしてもダメ。
「…ねぇ理姫さん、あなた、直枝くんの妹だよね?」
「う?それ以外に何があるのかな?」
「…なら、あまりベタベタされると、その…」
「…努力もしないくせに、癪に障る、とか言いたいのかな?」
「っ!」
水面下ではついにこの2人のバトルが勃発してしまった。
って何冷静に言ってるのさ僕!止めないと。
「理姫、杉並さん」
「元はといえば」
「え?」
視線が、僕に注がれる。
「直枝くんが優柔不断だから、こんな、こんなことに…なるんだから」
「え…」
今日の杉並さん、いつものあの静かで、勝沢さんと高宮さんの後ろでオドオドしているだけの女の子から一転、強気に。
なんか、相手が理姫だからかな?どうしてだろうね(鈍感な理樹君…。
「それに、兄妹は結婚できないんだから!」
「だから貰うって、そんなことが許されるとでも?」
「そ、そうだよっ!」
「「お兄ちゃん(直枝くん)は黙ってて!」」
「ひぃっ!」
あぁ、もう身も蓋もねぇや…。
そのまま、僕と理姫と杉並さんは、僕たちの部屋に。
あぁ、こりゃ今日は無断欠席扱い、かな。今から始まるであろうお色気全開バトルを前に、冷静に判断なんかしてる僕だった。


あとがき。

ついに杉並さんが動き出しました。
相坂版杉並さんは肩くらいまでの黒髪。だけど休日はヘアピース使って来ヶ谷さん並みのロングヘア。
メガネはもちろん赤のプラスチックフレーム!腐女子さんっぽいでしょ?
同人誌との出会いはつい最近。西園さんの影響で。
おかげでアレですよ。お小遣いは全部同人誌に消えていくってオチで。
ちなみに本編と違って?相坂版では杉並さんも個室です。
壁には好きな男性キャラのポスターとかL判の理樹くんの写真とか2Lの理樹くんの写真とかKGサイズの理樹くんの写真とかA4サイズの(以下ry
最近隣の部屋に理樹君が(無期限で)お引越ししてきたことを知るなり、二人がいないうちに部屋に盗聴器(犯罪ですっ!)仕掛ける腹黒さ。
ちなみにその声をオカズに、毎晩独りでハァハァしてるとか。

 近々相坂版杉並さんのスペック表も作りますんで、そちらも参照のこと。
特別書き下ろし版って感じの小ネタでは、杉並さんの横恋慕にも期待です。
相坂でした。

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