カップリング:理樹×理姫
シチュエーション:理樹が理姫で理姫が理樹で


 「わーっ、可愛いね、理樹くんっ!」
むぅ。可愛いって言われて喜ぶ男って中々いないんだけどなぁ…。
その例に漏れず、僕も女の子に可愛いと言われて喜ぶ人間ではない。
だから小毬さんに可愛いって言われても全然嬉しくないし、早くこれ脱がせてってばっ!

 事の起こりは2時間前。
「ねぇお兄ちゃん」
「ん?」
さっきまでメールで誰かとやり取りをしていた理姫が、ベッドから起き上がる。
部屋着とはいえ、ショートパンツのお尻のラインが目の毒だ…って僕は何を考えてるんだろう。
「お兄ちゃんって、わたしのお兄ちゃんだよね?」
「至極当たり前のことをいまさら聞くあたり何か企んでない?」
「…えへ」
「はあ…」
理姫は僕と同じで隠し事やウソがあまり上手なほうじゃないから、聞き方からすぐ何かを企んでいることが分かった。
だけど、それが何を企んでいるのか、何を意味しているのか、その時点では僕は断定しようもなく、とりあえず聞いてみることにした。
「で、何がしたいの?」
「んー。お兄ちゃんがわたしで、わたしがお兄ちゃんになるって感じ、かな?」
「よく分からないよ」
つまり僕が理姫になって、理姫が僕になる。兄妹入れ替わるってこと?
「兄妹入れ替わるなら単に理姫をお姉ちゃんって呼べばいいのかな?」
「んー。わたしはそれでもいいんだけど、ねぇ…」
ねぇって言われても。
そして次の瞬間、後ろに黒い影が出てきて、そして僕の意識は暗転した。


…で、今に至る。
気絶している間に理姫の制服に着替えさせられ、そして。
「うむ。ぱんつまで理姫君といっしょにしている。有難く思いたまえ。はっはっは」
「ちっともありがたくないんですけど!」
「…何だと、可愛いゾウさんの理樹君のくせしやがって。ひねり潰すぞ」
「ぼ、暴力はんた〜い…」
来ヶ谷さんが有無を言わさぬ空気で僕を睨みつけてくる。こうなれば蛇に睨まれたアマガエルの気分をお手軽に味わえる。
ってか…見られてたんだ…。まぁ、今更ってところだけどね…トホホ…。
あぁ、理姫ってば思い出して赤面してるし…。どうしようかな、今後の接し方も色々考えないと。ってそれよりっ!
「お願いだから早く着替えさせてよ!」
「…それは出来ません」
「何故っ!?」
「…さぁ?」
「さぁって!」
つまり西園さんが言いたいのは、悪乗りしている以上このままタダではやめない、ということだろう。
「つまり、諦めが肝心と言うことさ。さて、このウィッグを付けたまえ」
「え…」
これって、確か恭介の部屋でみたポスターの。
「うむ。真・恋姫†無双とかいう大人のゲームのヒロインで、桃香君とか言うらしい」
やれやれ恭介氏が惚れるだけはあるな、何でも声が理姫君に似ているらしい、と付け加える来ヶ谷さん。
いやいやそんなどうでもいい裏情報はいらないんだけど…。
「で、これを付けて僕はどうすればいいのさ」
「ふむ、中々野暮なことを聞くな、今日の理樹君は」
いや、ちっとも野暮じゃないと思うんですけど?
「見た目もほぼ理姫君と同じになった。元々髪型はほぼ同じ、違うのは普通のリボンか羽リボンかの違いくらいだからな」
「…」
「で、理姫君はアレだ」
「って僕の制服っ!?」
理姫は天真爛漫なもので、何食わぬ顔でフツーに僕の制服を着ておられました!
「理姫っ」
「…男の子の下着って、凄い通気性いいんだね…おまた、スースーするかも」
「そんな報告いらないからっ!」
あぁ、来ヶ谷さん、理姫にトランクスなんか穿かせたの!?せめてボクサーブリーフを…ってそれもダメっ!
「だが理姫君を男にしたとして、髪の長さが全然理樹君と違うからな。こればかりはウィッグじゃごまかせない」
「だったらさっさと僕を釈放してよ…」
「そこで理姫君」
「はいっ♪」
え、僕無視してどんどん話進んでないですか?てか人の話聞けよっ!
「小うるさいハエは放置して」
ついにハエ扱いですか…僕そろそろアイデンティティを喪失して空も飛べるはずやりそうです…。
「髪を下ろして、後ろで一本に結んでみてくれ」
「はいっ♪」
理姫、健気に悪魔の言うことを聞くことはないんだよ…?
「さっきから五月蝿いぞ、女装変態理樹君。その格好のまま恭介氏の部屋に放り込んでもいいんだがな」
「それだけは本当にやめてっ!お願いだからっ!」
「…頼み方というものがあるんじゃないか?変態理樹君?」
「…ぐっ…」
あ、あのー。そろそろSSが進行上危うくなってきたんですけど…。


<Side:Rihime>

 お兄ちゃんの制服。お兄ちゃんのにおいがする。
それでいて、やっぱりあんな華奢でも男の子なんだな、って実感する。わたしの胸の大きさよりも、ちょっとだけ大きなお兄ちゃんの…。
昨夜もギュッって抱き締めてもらって眠ったから、あの感触が身体に残ってる。
そんなお兄ちゃんの制服に袖を通して、そして来ヶ谷さんに言われるままに髪をおろして、後ろで縛る。
…あ、なんかこれ、某旅のるろうにさんになった気がするよ。
頬に十字傷とか書いてみようかな♪
「うむ。私の予測どおりだ。なんかこう、水を凍らせた刃を振るうイケメン剣士みたいになったな」
あ、その手もあったかぁ。じゃあお兄ちゃんは某治癒の少女さん?でも某炎の右腕くんがいないよ…?
それにその某水の剣士さんの中の人って…グリリバ…あ、ううん、なんでもないっ。
「身長は理樹君より拳一個分小さいくらいだが、靴をシークレットブーツにすればなんとかなるだろう」
「ほぇ〜」
でもなんでそんなの持ってるんですか?来ヶ谷さん?
そんなことを気にしつつも、とりあえず言われるままにシークレットブーツを履く。某156cmさんもビックリだねっ♪
「そして理姫君、これから外に出るが」
「って来ヶ谷さんっ!?理姫に何させる気なのさっ!」
「ええい五月蝿い黙れこの天然素材が」
「わけわかんないよっ!」
お兄ちゃん、なんか興奮してるけど、血管切れちゃうよ?
あ、切れたら、わたしのお膝で手当てしちゃうねっ。そのときはミニがいいかな。あ、お兄ちゃんって白とピンク、どっちが好きかな?
「理姫もぽわわ〜んって顔で話聞かないのっ!」
「そうだな。理姫君と理樹君はこれからいっしょに外に出るのだから」
「えぇっ!?」
ほわ〜…わたしはともかく、お兄ちゃんも…♪
「そこで理姫君はちょっと声のトーンを下げて、低めの声で喋ってくれ。そうしてくれると色々助かる」
「あ、はいっ」
「理樹君はいつものような声でいい。もしくは喋らなくてOKだ」
「じゃ喋らないほうで…」
「却下だ」
「なぜっ!?」
やっぱりお兄ちゃん、来ヶ谷さんと仲いいなぁ。嫉妬しちゃうよ。

でもね、お兄ちゃん?
過度な嫉妬の炎は、その対象を平気で焼き殺しちゃうんだから、覚えておいてね♪

 「な、なんか背筋に寒気が…」
「うむ。奇遇だな、私もだ」
気付いちゃったかな?
「まぁ、それはともかく。理姫君にはこの模造刀を」
「あ、はいっ♪」
うわー。これなら来ヶ谷さんの頭だってぱっくり割れちゃいそうだよ。
「な、なぁ理樹君。どうも理姫君の背後に黒いオーラが見え隠れするんだが…」
「奇遇だね…僕もだよ…」
むぅっ。なんか2人意気投合しちゃってるよぉ…。仕方ないから2人とも頭をスイカ割りしちゃおうかな。
「まぁ、それはともかくとして、とりあえず2人はこれから校内を回って、正体を見破られずに帰ってくる。これがミッションだ」
「ほわ〜…」
つまり合法的にお兄ちゃんと校内デートってわけですね。分かりますっ♪
断る理由もないし、わたしはいつでも、お兄ちゃんの半歩後ろを突いて付いていきます♪
だってわたしは…良妻賢母さん、なんだからっ。
「ちょ、ちょっと待ってよ来ヶ谷さんっ!」
お兄ちゃん、ちょっとは空気読んでよ、てか空気嫁。
「どうした理樹君」
「なんでそんなことさせるのさ!僕はイヤだからねっ!」
「ほう…なんで、とな」
何でって、ねぇ。
「楽しいからではないか?」
あ、やっぱり来ヶ谷さんって、わたしに通じるところがあるなぁ。微妙に親近感を覚えちゃうよ。
でも、お兄ちゃんに何か起こったら真っ先にぬっ殺すターゲットNo.1ってことは忘れないでね。来ヶ谷さん。
「ちなみに逃げたり校内めぐりをしたフリは禁止だ。私がとある場所に隠した『野口1000mg』の肖像画を持ってくるまで部屋には立ち入り禁止だ」
「えぇっ!?」
つまりお兄ちゃんとオリエンテーリングですね?
楽しみだなぁ。だって、見つかるまでずっと…2人っきり…だもん。
「もしも今日の夕方6時までに見つからなければ、理姫君のこの脱ぎたてぱんつをヤホーオークションに出品するからな。顔写真入りで」
……………。
とりあえず、来ヶ谷さんは暗殺する方針で。
「ひ、卑怯だよ来ヶ谷さんっ!」
「ふははははッ!何とでも言えばいいさ」
「色情魔、変態、女の敵、鬼、悪魔!」
「よし殺す」
お兄ちゃんに何とでも言えって言ったのは来ヶ谷さんでしょ。もう、お兄ちゃん、こんなおっぱいだけ凄い女には関わらなくていいよぉ。
……なんて言いつつ、お兄ちゃんのてを引っ張る。
「理姫?」
「行こう?」
「え、う、うん…」
お兄ちゃん、可愛いっ♪何があってもわたしが守ってあげるから、安心していいよっ。


 で、結局肖像画はあっという間に見つかった。
「早っ!」
「色々巻いていかなきゃオチまでに間に合わないらしいよ?」
理姫冷静だなぁ…というより色々冷めてるなぁ。
ともあれ理姫と僕は嫌々ながらも注目の的だった。だって、長身痩躯の男(中身は女の子)と、女の子(中身は僕)が、
仲良く歩いているんだから、誰でも驚く。あぁもう、早く帰って着替えたいよ…。
「お兄ちゃんはわたしが守るって言ったんだから、ちゃんと有言実行しただけだよ、わたしは」
「…」
こういうところで理姫って凄いと思う。とても血の繋がった妹とは思えないなぁ。
…ちょっと悪乗りしやすいところはナントカして欲しいけど。
っと、向こうから誰か来るっ!ってあれはっ!
そこには、見慣れた人が一人。


<Side:Sasami>

 ふぅ…今日は特に辛いですわ…。
やはり女の子にとって二日目のこの重苦しさは拷問ですわね。もうっ、わたくし、当面子どもなんていらないのにっ!
頭は痛いしお腹は痛いし、今日はもうこのまま帰りましょう。
唯一の幸運は、棗鈴に絡まれないことでしょうね…。あの子、最近妙に目障りですから…。
わたくしは、あなたとお友達になった覚えはなくってよっ!
と、向こうから人が来ますわね。こんな暗い顔を見せてはいけませんわ。笹瀬川佐々美、TPOは弁えていますの。
「…」
「!!!」
ってぇ、な、なんですのあの御方…っ!

 長身痩躯に長い髪を後ろで束ね、身長は裕に170cmくらい、手には刀、そしてとても凛々しい瞳…っ。
お隣は…恐らく最近転入してきたと噂の直枝さんの妹さんですわね。別に興味はありませんわ。
で、でもでもっ、あの殿方は…っ!
最近わたくしにとって唯一無二の殿方だった宮沢様が色々残念なことに(バカ的な意味で)なって、人生に絶望していましたのに、
わたくしはやっぱり天に愛されていますわ〜〜〜〜〜っ!
あぁ、あの瞳、まるでテレビで見た宮小路瑞穂様に引けを取らない柔和さ…もう視線が合うだけで孕ませられてしまいそう…。
みずみずしい唇、柔らかい笑顔…まぁ、絵画が趣味なのかしら、キャンバスを持っておられますわね。
やはり天才の行き着く先は芸術なのでしょうか。わたくしもその気持ち、分からなくもありませんわ。
「…♪」
あぁぁぁっ!?め、目がっ、目が合ってしまいましたっ!
な、なんて優しい瞳…聖母マリアもビックリして退散してしまうみたい…。
「えーと、笹瀬川さん、だよね?」
「…!!!」
しかもあの距離だったのに一瞬でっ!?男性版来ヶ谷さんなのでしょうか!?
とりあえず、タダモノじゃないことは事実ですわね。
「あ、あら、わたくしを知っているとは、いい心がけですわね」
「うん。有名人だからね。知っておくのは当然だよ」
ま、まぁ…。この優しいお言葉、そしてその口調…心が、溶かされてしまいそうです…。
「ふ、ふん。そう言ってわたくしの心と身体を程よく弄ぶ口実なのかしら?」
ま、まっ、わ、わたくしったら、なんて酷いことを!心にもないのに…っ!
だけど目の前の殿方はそれを意に介さず。
「ううん。わ…ボクはあくまで、いつかめぐり合う、大事なお友達のことを覚えておきたいだけだから」
「…」
夏の青空を映し出したその双眸の虜になり、わたくしは、もうそこから一歩も動けなくなってしまいました…。
「それじゃね」
「お、お待ちなさいっ!あ、貴方のお名前を…っ!」
わたくしだけ知っておいて、わたくしに貴方の名を教えないなんて不公平じゃありませんこと!?
そう声を荒げて言ってしまう。また心にもないのに。
そんなわたくしに、彼は。
「ボクは…」
そこで詰まる彼。わたくしに名乗る名前を持たないとでもかっこつけるおつもりかしら。
もっとも…そんなことを言われても、彼なら許してしまいそうですわ…。
すると、彼の人差し指が、わたくしの唇に乗せられる。
「!!!」
「答えは、また今度会ったとき、ね?」
「…」
その温かな香りに包まれ、わたくしの意識は…。
途切れる間際、そこにいるはずのない直枝さんの「笹瀬川さん!」という声が耳朶に響き…五月蝿いですわ…せっかく、人が…。


 あとがき

一応読みきりのつもりですが何か続きそうな書き方しちゃってごめんなさい(笑)
この後理樹君と理姫ちゃんは絵を無事来ヶ谷さんに渡し、ミッションは終了しました。
ホント、あたしの作品では佐々美ちゃんもロクな目に遭わないわね…。

ちなみにこの展開そのものはWEB拍手より。

>いや・・・理樹を女装させて理姫を男装させて理樹は理姫に理姫は理樹になって学校生活を送るとか・・・ですかね?

というリクエスト?があったため、思わず書いてみました。ただ内容が内容だけに薄っぺらくなりました。
悪乗りして書いた小ネタゆえにご容赦くださいませ。相坂でした。

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