何故か45口径ピストルが落ちていた。
日本の法律では法執行機関しか持っちゃいけないはずのピストルが学校の屋上に落ちているわけないのに、何故か落ちていたんだ。
そしてそれを拾った僕と小毬さん。彼女はその黒光りする(性的な意味はない)アレを愛おしそうに頬ずりし。
不意に、引き金を引いた。
当然撃発し発射される弾丸。勿論普通ならばそれはただのモデルガンで、何の意味も持たない遊戯に過ぎないはずだったのに。
思いっきり配水管に穴開いてますがな。
「…よぅし」
そして何故かのガッツポーズ。当たったのが嬉しかったのか、本物だったのが嬉しかったのか。
やがてその銃口は僕に向き。
「いぢわる理樹君に、オシオキ、しましょー」
いやそれほんとマジでシャレになってないから!


こまりんが困った子になっちゃうSS『こまり.45オート』


 バンッ!
直後の発砲音。人間って案外凄いもので、その気になれば銃弾を回避できる。ダーティーハリーさんだってナッシュ・ブリッジスさんだって出来るかわからないけど。
いやー、まさにアイアムレジェンド。生ける伝説である僕はこんなことあっさりと…って。
「いたた」
ヘンな姿勢で撃つから尻餅ついただけでした。うわー、可愛いぱんつ丸見え。眼福眼福。
でもその銃弾が穿った孔は壁にあり、ヤクザ映画の『土手っ腹に風穴ぶち開けんぞゴルァ!』が普通に出来るくらいの弾痕が。
「う、うわぁ…」
僕はどっちかと言うとぱんつよりそっちが大変気になります。というより気にしないと次避けられなかったら死ぬ。
「次はきっと大丈夫だよー。理樹君、一瞬で終わるからね」
「…えーと、コマリサン?」
なんだそのサンバルカンみたいな呼び方は、とセルフツッコミしながら向き直った先は。
あー、その、なんだっけ。レイプ目?とにかく目に光がないの。そしてその視線のまま銃を構えてるからなお恐ろしい。
そうだ、僕はこの目を見たことがある。雨の中の、あの光景で。
何があったかよーく覚えてないけど、その時はただ普段の小毬さんと違うなぁ、程度にしか思ってなかったのに。
今回は状況が違う。なにしろ相手は僕の死をまったく厭わない状態で、しかも殺せる拳銃を手に持っている。これじゃ黙って死を待つしか…。
いや、まだ可能性を捨てるのは早い!思い出せ!普段の何食わぬ会話の中にヒントがあるはずだ!

『いいか理樹。拳銃で狙われたらまずはとりあえず25メートル以上離れろ。拳銃弾は飛距離がせいぜいそれくらい、実際に当てるためには10メートルくらいが限度なんだ』
『何の話だよ恭介…』
『いや、DSのソフトでそんなのがあってな』
『ふぅん』

 ありがとう役に立ったよ(21)恭介!
そうだ、特殊訓練を受けてる人ならまだしも、小毬さん程度の腕なら25メートル離れれば何とかなりそうだし、隠れるところが…。
「って25メートル先に隠れるものないですけど!?」
やっぱり前言撤回!所詮(21)は(21)だった!
それもそうだよね。所詮はゲームの世界なんだ。大体弾に当たるときは当たるんだから諦めるしかない。
死なないのはドラマの世界だけで、結局現実はおろかで醜いものなんだ。そう、例えばこんな年端も行かない可憐な少女が拳銃なんか握ってるところで既に…。
「でも撃たれる気にはなれないっ!」
「理樹君いいからおとなしく死んでっ!」
バンッ!ほら言わんこっちゃない!銃弾はあらぬ方向というより僕の側頭部擦れ擦れを掠めて壁に命中。
「ほらー、動くとヘンなところに当たって余計苦しいことになるよ?おとなしく撃たれましょー」
無茶言うなっ!
とりあえず怖くなって逃げ出す。人間って恐ろしいもので、死が間近に迫ってくるととんでもない力を発揮する。火事場の馬鹿力ってヤツだろう。
現に僕は壁を背中にしてその場を逃げ去り、なんとお尻から窓を潜り抜け逃亡に成功したんだ。普段なら恥ずかしがって出来ない芸当だが、今は恥なんて論じている場合じゃない。
まして、相手が一撃で相手をストップさせる兵器を平気で持ってる以上は!いやシャレじゃないから現実的に!

 とりあえず一目散に階段を下ると、すぐ近くの男子トイレへ逃げ込む。そして個室へ侵入。
「ふぅ」
とりあえずここなら一安心だ。小毬さんは相当恥ずかしがり屋さんだから男子トイレに足を踏み入れる前に『恥ずかしざんまい〜』になってそれ以上何も出来なく
バンッ!
………え”?
「おんどぅりゃ〜!」
バン!あ、僕の個室を銃弾が貫通して隣の個室へ!
「ぐあっ!」
隣の個室の誰かが被弾したらしい。小毬さん、獲物を仕留めたか確認するため男子トイレへ潜入。授業が始まってる時間だから多分僕と隣の彼しかいなかったんだろう。
「さー、理樹くん、トドメを刺してあげるね」
よしやった!小毬さんは隣の個室の子が僕だと思い込んでる。今なら気を引いて逃げるチャンスだ!
しかし刹那。
ドンッ!ドンッ!
僕の部屋の個室を銃のグリップで強打する音。
鉄の塊で叩かれてるんだから、木のドアなんてさしたる防衛効果はない。たちまち孔が開く。その向こう側には。
「みーつけた♪」
可憐な少女の皮を被った悪魔がいた。差し込まれる銃身。ほぼゼロ距離。下手すると臓物撒き散らして死ぬ勢いだ。いや下手しなくてもそうなる。
ある種の恐怖と絶望。相手はこっちを殺すつもりでいる。僕は、彼女を殺す勇気はおろか傷つける勇気すらない。もう、最初から勝敗は決していたんだ。
真実の瞬間をかみ締めるため目を閉じる。なぁに、あんな大きな穴を開ける銃だ。死ぬときはきっと相当あっけないに違いない。
「うんうん、いい心がけだね、理樹君〜」
人殺しに褒められても何も嬉しくなんかない。お前はこのまま地獄に落ちるんだ!小毬さんの皮を被った何かめ!
呪詛の言葉を胸の奥で紡いでいるときだった。
「ふー、トイレトイレー。わわわ忘れ物〜っと」
なんかよく分からないけどどっかで聞いた歌声のどっかで聞いたキャラが現れた。たちまちそっちに気を取られる小毬さん。
チャンスだ。今しかない。
渾身の力を込めた蹴りはドアをぶち破り、蝶番の外れたドアは小毬さんの頭に吸い込まれていく。
勝った。今しかない。脱兎のごとくその場を去る僕。後ろで怒号と銃声が聞こえた気がしたけど気にしない。白石くん!谷口くん?君の死は無駄にはしない!
「…邪魔して。許さないから!」
バンッ!もう一撃銃声。命乞いする命の恩人の声が聞こえなくなったあたり、恐らく頭部にでも銃弾を浴びせたのだろう。
コンクリートに穴を開ける破壊力だ。きっと頭はスイカでも割る勢いで吹っ飛んでしまっているに違いない。かといって骨を拾いに行く心理的余裕など今の僕にはない。
ただ逃げる。生かしてくれた生命を無駄にしないために逃げる。

 少し走ったところで見えてきたのは生徒会室。ここならばそうそうバレることもあるまい。
そして僕には必勝の策が既にあった。それはいつかの世界で沙耶と名乗る少女と一緒に戦ったときの話だ。
『コルト45口径ピストルは7発しか装填できないの。あたしが今使ってるM9ピストルはもう少し入るんだけどね』
そう。逃げる最中も無意識に数えていた、銃声の回数。7回だった。つまり小毬さんのピストルにはもう。
「弾は入ってないはず」
反撃のチャンスここに到来。うまい具合にやり過ごして後ろからこの角材で頭部を殴り。
「後はお仕置きだね。全校生徒の目の前で種付けでもしようか」
至極冷静に彼女の体を弄ぶことを考え付くあたり、まだ人間としての余裕はあるようだ。獣に化ける直前のアソビの部分が。
許して!理樹くん許して!赤ちゃん欲しくない!こんなのいやっ!そんな声が脳内に響いてくる。そう、すべては角材であの化け物を仕留めてから。
その未来予想図は、すぐに破かれた。
バン!バン!バン!
ガラスが割れる音、生徒会室のドアが被弾する音。飛び散る破片、肩を掠める、ちぎれ飛んだドアの金属。
「理樹君ー。鬼ごっこはもう終わりだよ〜。私チョコ食べたいから理樹君をさっさと仕留めたいの」
チョコ>>>>(越えられない壁)>>>>>僕だったなんて!
いや驚くところはそこではなく。
「え、コルトは7発だって…」
「銃弾がいっぱい落ちてたの〜。び〜だまみたいだよ〜」
ジャラジャラー。床に4発落としてみせる。それでも彼女の腰についている袋にはまだまだ銃弾が大量に入っているようだ。
「全校生徒道連れに理樹君を射殺しても、まだまだ余る銃弾…。ねぇ理樹君、このまま逃げ続けても、他の誰かが犠牲になるだけなんだよ?」
「…」
それはその銃を手にしている誰かさんの身勝手だ!
言い返す前に銃口が僕の顔面に照準を合わせる。ターゲットロック、目標、僕の脳天。
「あ、そうだ。理樹君、最期に何か望みはある?」
「…この角材で力いっぱいお前を殴りたい!小毬さんを返せ!」
「…言いたいことが分からないよ?私が、神北小毬。理樹君も良く知ってる小毬」
そんな小毬さん知らない!いや、僕が知らなかっただけかもしれないけど。ホントはあんなかわいい仮面の下にケダモノの本性が…なんて感じで。
その世界が認められない僕に近づく小毬さん。そのまま僕の顔面に腰を下ろす。温かく優しい芳香のぱんつに包まれた少し大きなお尻が、僕の顔を圧迫する。
「ふぐぅっ!」
「最期くらいはいい思いさせてあげる。理樹君もお母さんのココから生まれてきたんだよ。だからココに還るの。私の匂いに包まれて」
うっすらと見える、ぱんつのシミ。そのシミが出てきた穴。そこから僕は17年前に産声を上げた。そこに還る?いや違う。それは小毬さんであって母さんではない。
それに、こんな気の狂った痴女如きに殺されるなんてちっとも幸せじゃない!いい思いなもんか!
怒りのあまり僕は渾身の力を手に込めて、そして彼女を突き飛ばす。
小毬さんは机の角に頭をぶつけ、昏倒。やった、僕の勝ちだ。今のうちに…。
バンッ!
刹那の銃声。銃が、彼女の手から滑り落ち、暴発。それは見事に僕の分身を射抜き、そして…。


 「理樹君っ!起きてっ!会社に遅れるよ〜!」
「…ん…」
可愛らしい声に目を覚ますと、そこには。
「おはようございます、あなた〜♪」
直枝(旧姓:神北)小毬。学生時代からの恋愛をここまで育んで、そして昨年末に結婚した。
そう、優しく温かい彼女に、僕は父さんと同じ、家族の大切さ、家庭の温かさを見ていたんだ。
可愛い奥さん。お腹には既に僕との子供が宿っている。お腹を庇いながらも僕の面倒を甲斐甲斐しく見てくれる彼女に、頭が下がりっぱなしだ。
今朝だって、こんな夢を見たのはそう、さっさと起きないと遅刻するという彼女からのメッセージだったに違いない。起きなきゃ。
今日は久々に知り合いに会う。今は仕事の関係の相手、取引先の重役の一人である来ヶ谷さんとだ。
厳密には過去に数回会っている。商談取引のためだといってカラダも重ね合った。確かに僕には小毬さんと言う妻がいる。でも、妻で満たせない欲求を、彼女に…。
「速く準備しようね〜」
「うん」
おっと、想像するとテントが大きくなりそうだ。手っ取り早く…。
「ねぇ小毬」
「あんっ…」
後ろから抱きしめ、その豊満な胸を揉み、そして耳たぶを甘噛みする。
「ヌイて…」
「ダメだよぉ…遅刻しても知らないんだから〜」
来ヶ谷さんにいっぱいぶっかけたいからホントは温存したいけど、彼女が妊娠してからと言うもの、安定期に入る前だからと我慢している。
小毬さんだってだいぶ溜まっているはずだし、気取られないよう相手してあげないと。
「手でもいいから…」
「もうっ、おバカ言ってる場合じゃないよ!ほらバスの時間!」
「あっ、ホントだ!」
彼女の頬にキスをし、一言。
「帰って来たら続きしようね」
「もうっ、恥ずかしいよ〜」
キッチンに用意してあったトーストを咥えると靴を履きながらダッシュ。目指すは目の前のバス停。
そのバス停から200mくらい先に、紅いスポーツカー。サングラスを外し、手招きする黒髪の彼女。
僕は手を振ると、そちらに向かって一直線に走った。

 だんな様を見送った私は、洗い物を終えると、クローゼットに向かう。今日は産婦人科で診断があるのだ。
着替える。マタニティぱんつって、お腹を守ってくれる温かさと同時に、ママになった実感を湧かせてくれる。マタニティドレスもそうだ。
私は、この子のママになった。それが現実。この生命が、たとえ望まれないものだったとしても。

 理樹君は妊娠してからも私を求めてくる。安定期に入る前であってもだ。一度言われたことがある。子供と僕、どっちが大事なんだって。
そして知っている。彼は結婚してからもいろんな女の子に手を出していると。ゆいちゃん、みおちゃん、りんちゃんにも。
みおちゃんには直接言われた。彼の赤ちゃんを妊娠した。責任を取って認知するか、離婚して欲しいって。
だからさっさと撃ち殺して埋めた。彼、最近西園さんにメール送っても返事ないね、どうしたんだろう。リトルバスターズ同窓会には来るのかな?って言ってたっけ。
白々しい。私がいながら種付けして孕ませておいて。勿論バレるような隠し方はしない。失踪扱いで事件は解決するように既に仕向けてある。
知ってる?豚さんって雑食性なんだよ?人の死体をバラして砕いて食べさせるって、昔からいろんな国のマフィアがしてるんだから。
この子だって、本当は理樹君の子じゃないかもしれない。そういうルートを作るために、カラダを売ったこともあったんだから。
それでも彼が私との子だと信じてくれる限り、きっと彼の子なんだろう。そう、今夜まで。
「…」
クローゼットの奥に設けてある秘密の隠し場所。そこには、サイレンサーの付いた小さな拳銃。
「…」
ごめんね、赤ちゃん。
パパには会わせてあげられそうにないよ。パパは悪い人だから、殺さなきゃいけないの。
大丈夫。あなたは何も心配せず生まれてきていいから。あなたには罪はないから。
原罪の穢れのない胎児。穢れすぎて狂ってしまった、私たち夫婦の歯車。
きっと今日はゆいちゃんあたりに会うに違いない。ピンクのネクタイを付けていく日には、決まって帰りにゆいちゃんの話をするから。
そうだ、ゆいちゃんも一緒に始末してしまおう。一人殺すも二人殺すも、きっと同じことだから。
隠し場所の拳銃を撫でると、私は、母子手帳にキスをした。
(終わり)


あとがき

さーて、なんか面白くもなんともないSSが出来上がりましたよー。
ダークラブなヤンデレこまりん。きっとこれは某小毬大好きっ子あたりから『こんなんこまりんじゃないっ!』ってパンチされそう。

今日の格言『事実は小説より奇なり』
相坂でした。

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