「時に、理樹君、トキと思ったらアミバだったというのはなかなかソソられないか」
「いきなり何さ」
水曜日の午後は良く晴れ渡っていて、なんとなく、風が心地いい。
初夏、少しずつではあるけど肌を焼く感触に目を閉じていると…その質問だ。
「そのよさが分かるいい子にはおねーさんの脱ぎたてぱんつをあげようと思ったが…残念だよ」
「いやいやいやそのまま残念でいいからね」
もう何度目か分からないお茶会。数学の時間は有無を言わさず拉致され、こうなるわけで。
「それはそうと少年。さっきから誰に説明してやがる。こんなエロエロボディを前にいささか失礼ではないか?」
「もう失礼なままでいいから…」
心の声にツッコミされる僕の、気持ちも少し察してください。


ノリで書いたSS『写真部狂想曲』


 「で、何ゆえカメラなど持っている」
「ん、あぁ、コレ?」
そんな僕の手には、一眼レフカメラ。
それも、1959年に発売した初代オリンパスペンの初期ロット。所謂銀塩フィルムのカメラ。
「マニア価格でジャンクにも諭吉数人分の価値があるカメラか。ふむ」
「後見人さんがね、父さんの形見の品ってことでくれたんだ」
僕には両親がいない。小さい頃、死んでしまったから。
このカメラはそんな先週の昼下がり、後見人さんからの小包が届き、『食い物なら分けろよ』と息の荒い真人を横に追いやりつつ
開けたところ、入っていたものだ。何でも後見人さん曰く僕の進級祝い、だそうで。
遺書にはそんな記述なんてなかったと思うけど、たぶん18歳になったし、少しずつ高価値な形見をアンロックしてくれる、ってことじゃないかと
好意的に解釈し、この間近所の写真館にメンテナンスに持って行き、おととい帰ってきたばかりだ。
「ほう。レトロ好きかと思いきやそういうわけではなかったか」
「うん、どっちかと言うと」
このカメラを持ってどこか旅行に行きたいな、なんて。
3月に恭介が無事に卒業し、静かになったことだし。そろそろ何かをしたいな、とカメラをなんとなく来ヶ谷さんに向けると。
「なんでスカートめくるのさ」
「喜ぶと思ってな」
「いやいやいや」
来ヶ谷さんのイメージじゃないけど、ミントグリーン、か。
じゃなくて。
「旅行か。一人でか?」
「うん、青春18きっぷでね」
「…」
ガスッ。思いっきりコーヒー缶を投げつけられる。
「痛いよ!」
「ふん、朴念仁にはちょうどいい薬だろう」
「いやいや訳分からないから」
でも、大体は分かっているんだ。
「付いてくる、とか言うんでしょ?」
「馬鹿を言え。誘われなければ付いていく気も湧かない」
誘わなきゃ、か。
実際、今特定の彼女がいるわけではないし、正直誰が嫉妬をするでもないと思う。
だったら、来ヶ谷さんと一緒に旅行に行って、高校時代最後の思い出を残すのも、ぶっちゃけるとアリだと思う。
「そもそもこうもあっさりとぱんつを撮らせてやる女学生はそうそういないぞ。ほれほれ」
いや別にそれは期待してませんから。白いリボンのワンポイントか。メモメモ。
「でもね、正直なところ、一人旅ってのもしてみたいんだ。ほら、僕の場合」
眠り病-ナルコレプシー-のキャリア。今でこそそれを克服したけれど、そのせいでいつも、僕は誰かと行動していた。
そのせいで何かに自発的に動こうとしなかったフシがある。だから。
この相棒を連れて、一人であちこちを旅してみたい。
そんな僕に来ヶ谷さんは。
「…ならなおの事一人旅はさせられんな」
「どうしてさ」
「キミの場合、切符の購入も乗り換えも、すべて仲間任せだっただろう?それがいきなり自己判断を求められるとなると」
うぐ、確かに…。
ともあれその話はチャイムが鳴ったため中断となり、僕らは、HRのために教室に戻る。
…途中、階段を先に上る来ヶ谷さんのぱんつが拝めたけど。眼福眼福。



 「ねーねー理樹くん!」
今年から同じクラスになれた葉留佳さん(席もすぐ後ろだ)が元気良く声をかけてくる。
「今日は何を撮るの?はるちんも付いていっていい?」
「んー、今日はちょっとダメかな。生徒会広報部から取材協力の依頼が来ててさ」
「へー。んじゃそっちに付いてく!」
あくまでも付いてくるつもりか。それなら。
「じゃ先に部室に顔出すね」
「うん!」
部室に顔出して、そのまま来ヶ谷さんか謙吾あたりに引き取ってもらうことにしよう。
 実のところを言うと、3年生になって変わったことが一つだけある。
リトルバスターズが、写真部に生まれ変わりました。てへぺろ。
勿論、このカメラが直接のきっかけって言うわけではなく。
「恭介さんも卒業前にとんでもない置き土産だよねー」
廊下を歩きながら呟く葉留佳さん。そう、恭介の置き土産なのだ。
1月に街の写真展が開催されたとき、面白半分でiPhoneで撮影した写メを出展した恭介。
そりゃもう、僕ら全力で止めたよ?相手はセミプロとか気合の入ったアマチュアさん。その会場に使用機材:iPhoneな写真を持ち込めば
門前払いが関の山、最悪他の写真家さんを怒らせてしまうと。
ところが。結果はその写真が入選し、市長特別賞を受賞するに至った。
『…あぁ、俺も嘘だと思いたいが…いい機会だ。写真部を作ろう。デスク名は…』
例の如く、リトルバスターズだ!ってことで今に至る。そんな恭介卒業後も僕らは継続で写真部をするハメになり。
「でもカメラとか機材くらい寄贈してくれればいいのにね」
葉留佳さんの言うとおり、マトモにカメラを持っているのは、この前までは実家のカメラを使っている謙吾と、コンデジを持っている来ヶ谷さん、西園さん。
そして昨日から僕ぐらい。後の部員は大抵が携帯のカメラに頼っている状況だ。ノープラン恭介め。
と、葉留佳さんが立ち止まり、あーっ!と言った後窓を開ける。
「見て理樹くん!ホトトギス!」
でも見る前に別のものが飛び込んできた。
急に窓を開けたから風が吹き込んできて、やわらかな春の風と共に。
短い裾のスカートがめくれ上がり、葉留佳さんの太腿とお尻、それを包む布が丸見えに。
…白にカラフルな星のプリント。縁取りはピンク。眼福眼福。
それに気付いたのか葉留佳さんも。
「理樹くん、鳥どころじゃないみたいですネ♪撮る?」
僕に向き直ってスカートをめくり上げようとするから静止する。ごめん、往来だからやめようよ。
不満そうな葉留佳さんだったけど、とりあえず宥めて僕らは部室に向かった。

 「遅いぞ理樹君」
部室に入ると目に付いたのは来ヶ谷さん、そしてお茶を淹れているクドと小毬さん。将棋をしている真人と謙吾。
「わふー!ホットです!」
「クーちゃん大丈夫?」
熱いお湯が跳ねてクドの白磁のような手に当たったらしい。ぐぬぬ。僕と代われ、じゃなくて。
「なんならおねーさんが舐め舐めしてやろうか?一瞬で完治だぞ」
「わふーっ!それはそれで怖いのです!」
まぁここまではいつもどおりだ。でも。
「来ヶ谷さん」
「なんだね少年。突っ立ってないでさっさと入ってきやがれ。立てていいのはプレイのときだけだぞ」
いやいやいや訳分からないから。
じゃなくて。
「…単刀直入に聞くよ」
「うむ」
ビッ、と真人と謙吾を指差し。
「小毬さんとクドじゃなくてなんで真人と謙吾がメイド服着てるのさ!」
「言うなァァァァァァッ!」
謙吾、こらえきれず立ち上がり嗚咽。
「理樹、分かってくれ!この筋肉はともかく俺はこんな格好など進んでしない!」
「あァ?メイド服って言われるまではどんな服かワクテカしてたじゃねぇか謙吾の先生様よぉ!」
「今言うことではあるまい!貴様とは早々と決着をつけるべきだと今心に決めた!」
「望むところだ!」
あぁ、メイドガイ二人、暑苦しいよぉ…葉留佳さん喜んじゃってるし。
しかし刹那、来ヶ谷さんの華麗なサマーソルトがまず真人を沈める。上段回し蹴りが頭部と胸部に1回ずつ、そして顎を蹴り上げる蹴りが1回。
「ぐふぅっ…」
そして唖然とする謙吾を足払いで転ばせると、仰向けになった謙吾の腹筋の上に、何処から出したのか漬物石投下。
「メメタァ!」
謙吾、潰れてないから安心していいよ。
「ピチピチ美少女たちがせっかく紅茶を淹れてくれているんだ、黙って待ちやがれ」
いやこの断末魔を作ったのは来ヶ谷さんだけどね。
ともあれ断罪を終えると来ヶ谷さんはまた席に戻り、そして。
「で、理樹君。私との旅行先は決めてくれたかね」
ピシッ!
空気がピーンと張り詰めひび割れる。葉留佳さんの顔から笑みが消える。
そしてガシャーンとカップを落とす音が2回、クドと小毬さんだ。
直後、ギギギ、と首を横、ないし後ろに向ける音が聞こえ。
「理樹くんっ!わけがわからないよ!」
「リキが不潔です!不純です!」
「理樹君っ!まずはおちつこー!」
いやいや、小毬さんが一番落ち着けよ。メリケンサック付けながら落ち着かせようとするなよ。
葉留佳さんは何かを契約させそうな勢いだし、マトモなのはクドだけじゃないか。
「いやいや、あくまで一人旅だって!」
「ほう、私と旅行に行って子作りをするのがそんなに嫌と言うことか。おねーさん寂しいぞ」
「「「」」」
一斉にこっちを見つめる悪魔たちの目。いやこっちみんな。
「理樹くんのソウルジェム…黒くなっちゃったんだね…」
わけが分からん。
「リキ…赤ちゃんが欲しいなら言ってくれればいいのです…」
論点違う。おちけつ。
「理樹君?結婚式には呼んでね?ケーキを真っ赤に染めてあげるから…」
新郎版結婚前に絶対に貰いたくないメール第4位。
殺される、そんな気配を感じた僕は、とりあえずダッシュで部室を後にするのだった。
後ろから、詳しく話を!とか認知を!とか言う声がしたけど気にしない。気にしてなるものか。


 「遅いわよ、直枝」
「ごめん」
いまや生徒会長としてもう馴れ馴れしく出来ない(もともとそんなこと出来るキャラじゃないけど)二木さん。少しご立腹みたいだ。
「あまり私を待たせると罰金バッキンガムなんだからね!」
いや確かにキャラ被ってるけど似合いませんから。僕歳納さんじゃありませんから。
「冗談はさておき」
「え、冗談なの!?」
「うるさい直枝。さっさと行くわよ」
さっきのボケにツッコミ入れさせてよ!ツッコミ殺ししないでよ!そんな心の声は虚しくも届かず、彼女は先に生徒会室を出た。
「後が閊えてるんだからさっさと終わらせないと」
「う、うん」
そんなこんなで部活動写真の撮影をしにいくことになった。
写真部は別に生徒会直轄ってわけではないけど、やっぱりその響きをいまひとつ快く思わない人間だっている。
「まして何か問題があった場合に写真部が一番に疑われるでしょ?庇ってあげられるのは生徒会だけなんだから。ありがたく思いなさい」
こんな事言ってるけど遠まわしに言えば妹の葉留佳さんが心配なだけなんだよ、きっと。
「べ、別に葉留佳なんてこれっぽっちも心配してないんだから!」
「へいへい」
「…で、今日葉留佳の調子はどうだった?」
モロに心配してますやん。だから僕も答えるのだ。
「今日は白にカラフルな星のプリントがされたぱんつだったよ。縁取りはピンク」
「…」
うん、死亡フラグ立てたねー。みんな先に逝って待ってるよー。
「…良かった、ちゃんと今日おそろいにしてくれたんだ…」
…は?
今思いっきり変なこと言ってたよ二木さん。
「Pardon?」
「直枝には関係ないことよ。さっさと行きましょ」
そんな殺生な。
でもぱんつ魔人なんてヘンなあだ名も付けられたくないし、僕は先を急ぐのだった。


あとがき
ってことで写真部リトルバスターズ編です。オリンパスペン(初代)を思いがけず手に入れた理樹君。
そんな彼のデバガメ物語が…始まりませんから。
とりあえず四季折々のいろんなシチュエーションを撮影して、ちょっと旅行に行って、そこで始まる恋の物語。
…で、ぶっちゃけエッチはするんだろうか。HA☆ME☆DO☆RIとか。相坂でした。

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